タバコによる活性酸素の害は、自分の責任で完全に防ぐことが出来るものの代表ですが、注意していれば、かなりの程度防げるものの代表には紫外線があります。
活性酸素のうち、一重項酸素と呼ばれるものは、紫外線などの光線によって発生する特別な活性酸素です。皮膚は、考えてみると、人間が持つ最大の臓器であり、他の臓器と同じように普通に発生した活性酸素の影響を当然受けます。だから、タバコを吸う人や気苦労の多い人など、つまり活性酸素の発生の多い人や除去能力の低い人は、より早く外見も老けてくるのです。
その上、顔面や肘から先の手背部は紫外線による活性酸素の影響により、二重の被害を受けるわけです。人間の皮膚の中で最も老化の遅い部分はお尻の皮膚ですが、これは、この部分が常に布で覆われ、紫外線の影響を受けないからなのです。 20 歳の人と 40 歳の人の肌を比べて見ますと、顔の肌では明らかな年齢差が認められますが、お尻の肌では 20 歳もの年齢差があるとはとても思えないのです。
テレビ等で、よく往年の大女優を見かけ、懐かしく食い入るように見ることがありますが、彼女たちはおおむねやはり美しく、歳よりうんと若く見えることが多いものです。演技力があることや目鼻立ちが整っていることは、女優になる前からある程度分かることですが、あまり老けず、いつまでも若々しく見えることは最初から分かっている訳ではありません。何故そうなのでしょうか。それは彼女たちが若々しくありたいと常日頃から願い、そのように努力しているからにほかなりません。外見が若々しく見えれば、気分も若返ります。気分が若返れば、それはホルモン系や自律神経系に作用して実際に身体も若返るのです。歳をとればとるほど、外見に気を使い、おしゃれをしてより若く見えるよう気を使って下さい。
「もう歳だから」とこの努力を放棄するのは、冥土への道をまっしぐらに走っているようなものです。たとえ同じ道でも、花を愛で、小川のせせらぎに耳を傾け、鳥の囀りを聞きながらゆっくり進みたいものです。
話を元に戻します。紫外線は皮膚に当たると活性酸素を発生し、これが皮膚のプチプチ感の源であったコラーゲンという物質を酸化します。コラーゲンは言ってみればゴムのような物質であり、ゴムが古くなる(酸化する)と弾力性が無くなりボロボロになるように、コラーゲンも酸化されると次第に弾力を失ってくるのです。これにつれて肌自体も張りが失われ、ついにはこれがしわやお肌のたるみとなって現れてくるのです。歳をとるにつれ増えてくるしみやくすみも同様に紫外線により発生する活性酸素が原因です。これらは皮膚の中のたんぱく質が酸化により着色したものであり、認知症の老人の脳により多く見られる老人斑と同様のものなのです。このような老人斑は、日光が良く当たる頬に、特に目じりの外側下の部分に好発するのです。
しわやしみ、くすみの治療は、近年の美容皮膚科や美容外科の進歩により飛躍的に進歩しましたが、そうは言っても、出来てしまったものを元に戻すのはとても大変なことであり、出来ないように努力する方が、はるかに簡単なのです。
皮膚の老化を防ぐにはなんといってもまずは紫外線(日光)を防ぐことです。また老人の皮膚は油脂成分が不足しガサガサに乾燥し老化を加速しますので、UVカットと保湿クリームは皮膚老化防止の必携の基礎化粧品です。これらの基礎化粧品はしみ、しわに対するものも含め、日進月歩で多数発表されておりますが、私のホームページでもその一部を紹介しております。興味のある方はご覧下さい。
申し遅れましたが、白内障も目の水晶体のたんぱく質が、紫外線による活性酸素により酸化されることによって起こりますが、まさか目をつぶって外を歩く訳には参りません。どうしても発生する活性酸素に対してどう対処していけばいいのか、ボチボチこの話をしてゆきたいと思います。
《参考文献》
『活性酸素の話』永田親義著/講談社ブルーバックス
『不老革命』古川敏一著/朝日新聞社
(2006年6月1日掲載記事)