10年ほど前であれば、活性酸素と言ってもその言葉さえ知っている人はごく稀であったでしょう。それが今はどうでしょう。正確に知っているかどうかは別にして、活性酸素という言葉自体を知らない人は、多分世の中の少数派になっているに違いありません。 どうしてこのように世に知られるようになってきたのでしょうか。それは、活性酸素と言うものが、我々の健康や寿命に密接な関係を持つことが次第に分かってきたからなのです。
活性酸素と言うと、活性なのだから、何だか身体にとって元気のでるもの、つまり、いいものと思っていらっしゃる方も多いのですが、実は、身体にとって非常に有害なものなのです。
 どのように有害であるかを説明するのは、中々大変なことなのですが、まず最初にお分かりいただきたいのは、活性酸素の害はただ単に「お酒を飲みすぎると、肝臓に悪い」とか「大食は胃に悪い」とか言うような限定的、局所的なものではなくて、もっと人間と言うよりは生物にとって、根源的に悪い存在なのです。しかも、この害を完全に防ぐ手立ては現在だけではなく、未来にもありません。何故ならば、活性酸素の害は、生き物が生きている限り背負ってゆかなければならない宿命的な害だからなのです。だから「生きているのが健康に最も悪い。」というブラックユーモアここからが生まれてきます。
 現在では、活性酸素はほとんどすべての病気の根源的な原因になっていることは明らかになっています。勿論、ガンも例外ではありません。活性酸素の害を完全に防ぐことは不可能と先ほど申しましたが、完全という言葉にさえこだわらなければ、この害をより少なくすることは充分可能なのです。あらゆる病気の根源的な原因である活性酸素の害を少しでも減らすことが出来れば、より健康で長生きの人生を送ることが出来るようになるのは間違いありません。
  私は、上京区の一介の開業医ですが、人より少し早くこのことを知ることが出来ました。活性酸素にまつわる色々な話題を、シリーズで紹介しておきたいと思います。