以前、ミイラの項でお話しましたが、植物の葉や、根や、実は、ミイラ作りには欠かせない材料でした。死後に造るミイラであれ、生き仏型のミイラであれ、植物に含まれている多くの抗酸化物質がミイラ造りを可能にしたのです。
昔は、肉を買うと、それは「竹の皮」なるものに包まれておりました。年配の方ならよくご存知のことでしょう。今ではすっかりビニール製になってしまいましたが、寿司や刺身を包んでいる「ばらんの葉」は、単なる飾りではありません。竹の皮やばらんは生ものの傷み(酸化)を防ぐための植物の抗酸化作用を利用した生活の知恵だったのです。
このように、身体を酸化から防ぐ抗酸化物質(アンチオキシダント)は植物に含まれていることが多いのですが、特に重要なのはビタミン類で、その中でもビタミンC、Eとカロテン(ビタミンAの前駆物質)が強力な抗酸化作用があることで有名です。このうちビタミンCは水溶性で、ビタミンEとカロテンは脂溶性なので、身体の隅々まで抗酸化のネットワークを張り巡らせており、活性酸素の害から身体を護り、老化を防いでいるのです。
アメリカのポーリング博士は、1人で2部門(化学、平和)のノーベル賞をもらった著名な学者なのですが、博士はビタミンCの熱心な信奉者でもあり、 70 歳くらいから、ビタミンCを毎日1000㎎以上摂取していたと言われています。彼は、1994年 93 歳でその生涯を閉じました。 93 歳という年齢が、彼の意図した長命なのかどうか、仮にそうであったとしても、それがビタミンCのおかげなのかどうか、微妙で検証不可能な問題なのですが、とにかく、著名な学者が、ビタミンCと健康や寿命との関係に重大な関心を持っていた話として有名な話です。
米国の国立研究所の疫学調査によりますと、血清ビタミンC濃度と死亡率の間には密接な関係があり、 12 ~ 16 年の追跡調査の結果、ビタミンCの血清濃度が一番低いグループの男性は一番高いグループの男性に比べると全体の死亡率が 57 %高く、ガン死亡率も 62 %高かったと報告されています。
ちなみに、現在の抗加齢医学では、ビタミンCの1日1000㎎以上の摂取はむしろ常識にさえなってきております。ビタミンCは、柑橘類やパイナップル、イチゴ、キウイなどのフルーツや、ブロッコリー、ピーマン、ほうれん草などの野菜類に多く含まれていることは皆様もよくご存知のことでしょう。しかし、これらの自然食品からビタミンCを毎日1000㎎以上摂取することは、ほとんど不可能に近く、充分な抗酸化作用を期待してのビタミンCを摂取するためにはどうしてもサプリメントが必要であると私は考えております。ちなみにビタミンCは大量生産が可能で、人工のビタミンCも天然のビタミンCも構造がまったく同一であるため、安全で値段も安いのでおすすめのサプリメントです。
紫外線によって生ずる一重項酸素という活性酸素は、皮膚のたるみ、しわ、しみの原因をつくる皮膚老化の主原因ですが、ビタミンCはこの一重項酸素を無毒化する作用も強いので、美容の観点からも大切なビタミンなのです。
《参考文献》
『不老革命』吉川敏一著/朝日新聞社
『活性酸素の話』永田親義著/講談社
『食べ物とがん予防』坪野吉孝著/文芸春秋
(2007年1月1日掲載記事)