歳をとるに従って、活性酸素に対する抵抗力が段々弱まってきます。主に活性酸素除去酵素(SOD等)や性ホルモンの分泌が少なくなってくるためです。活性酸素はあらゆる慢性病の原因ですから、年とともに病気に罹りやすくなり、有病率も飛躍的に上昇するのです。 60 歳の人の有病率は 40 歳の人の1・5倍ではなく 10 倍前後に跳ね上がるのです。
女性は男性に比べて、 60 歳くらいまではより若々しく、有病率も低いのですが、女性ホルモンの枯渇するこの年齢になると、この神通力も薄れ、有病率も男性と肩を並べてくるようになってきます。
「ひどいやないか。何とかならへんのか」との声が聞こえてきそうですが、残念ながら、加齢につれて生体の活性酸素に対する抵抗力が低下すること自体は、実も蓋もない話ですが、なんともならないのです。つまり、活性酸素に対する抵抗力が低下するということ自体が、老化ということなのでしょう。
これに対し、ホルモン補充療法やキレーション療法が研究されておりますが、これらの積極的若返り治療法は、将来性は非常に期待されていますが、まだ一般的な治療法とはなっていないのが現状です。
活性酸素の毒性を無毒化するアンチオキシダント(抗酸化物質)は、身体の中にもともとある酵素やホルモンだけではなく、実は、自然界にいっぱい転がっているのです。歳をとって酵素やホルモンが少なくなれば、ただ嘆いているだけではなく、これらを食物の形で取り入れ、不十分になった活性酸素に対する防衛能力を補う必要があります。医食同源といって、食べ物と健康は密接な関係にあることは皆様も充分理解されていると思いますが、歳をとると、この関係はますます重要になってくるのです。
自然界にあるアンチオキシダントは植物により多く含まれています。これは、植物が生きてゆくためにはどうしても太陽光に依存していかなければならないということに大いに関係しています。太陽光には紫外線が含まれています。植物はこの紫外線によって発生する活性酸素に対抗しなければなりません。植物は長い進化の歴史の中で、活性酸素に対抗するアンチオキシダントを自分で豊富に作り自衛するようになったのだと考えられています。
自然界のアンチオキシダントは、色素の形で保存されていることが多いです。このような目で見れば、太陽光の強い南国では、色の濃い植物の葉や花が大地を華々しく彩っているのも、「なるほど。それでなのか」と頷かれる方も多いことでしょう。植物だけではありません。熱帯魚に代表されるように、陽射しの強いところでは動物でも色鮮やかな外見を備えているのです。毎日の食卓を眺めるとき、色の濃い野菜は抗酸化物質が多く含まれ、抗加齢作用が強いということを知っているのも悪いことではありませんね。
《参考文献》
『不老革命』吉川敏一著/朝日新聞社
『活性酸素の話』永田親善著/講談社
(2006年12月1日掲載記事)