前回は、ガンの成り立ちと活性酸素の深い関わりをお話しました。活性酸素はガンだけでなく、他のほとんどの病気の発症に関係していることは、折に触れお話して参りました。どの病気にどんな風に関わっているかは、これからボチボチお話してゆきたいと思っていますが、今回は、この活性酸素の害を防ぐには、我々は、どのように対応していったらよいのか、を中心にお話を進めたいと思います。
その前に、今までお話したことをまとめておきましょう。
①活性酸素は、老化や病気の根源的な原因である。
②生きているだけで活性酸素は必ず発生する。
③身体に悪いと言われているもののほとんど全て(放射線、紫外線、農薬、タバコ、排気ガス、寝不足、過労、ストレス等)は、余分な活性酸素の発生原因となる。
④活性酸素の害を防ぐために、身体には防衛能力が備わっている。
以上のことでも分かりますが、活性酸素の害を防ぐには、当たり前の話ですが、まず、活性酸素の発生を出来るだけ少なくすることが大切です。それと同時に、出来てしまった活性酸素を無毒化する身体の防衛能力をアップすることも忘れてはなりません。
発生した活性酸素を無毒化する物質をアンチオキシダント(抗酸化物質)と言います。女性ホルモンは重要なアンチオキシダントであり、この量の違いによって女性が男性に比べて老化が遅く、したがって長生きであることは、このシリーズの最初の頃に申し上げたとおりです。
SODの話も以前申し上げました。覚えて頂いているでしょうか。SODは、スーパーオキシドラジカルという活性酸素を無毒化する酵素で、生物が活性酸素に対抗するために進化の途上で獲得してきたものです。1980年にカトラーが発表した寿命とSODの関係のグラフを今一度眺めてみましょう。SOD活性の高い(量の多い)動物ほど長命であることがよく分かりますね。酵素の中ではSODが最も有名ですが、この他にもカタラーゼやグルタチオンペルオキシダーゼなどが知られており、活性酸素から身体を守っているのです。しかし、残念なことには、これらの酵素群は大体 40 歳くらいを境として減少してゆきます。その結果、身体は活性酸素の影響をまともに受け始め、この頃から老化が急速に目立つようになり、あらゆる病気の罹患率も、この年齢以降は倍倍ゲームで増えてゆくようになるのです。
身体の中には性ホルモンや酵素の他にも、尿酸や補酵素のコエンザイムQ 10 と呼ばれるアンチオキシダントが存在しますが、いずれにせよ歳をとればとるほど、活性酸素の酸化力とそれに対抗するアンチオキシダントとのバランスが、一方的に攻撃(酸化)優位の状態になってゆくのです。「殺生やんか。何とかならへんのか」の声には、次回お答えします。
《参考文献》
『不老革命』吉川敏一著/朝日新聞社
『活性酸素の話』永田親義著/講談社
(2006年11月1日掲載記事)