活性酸素の最大の発生原因は、酸素消費をすること(つまり生きていること)であると、繰り返し申し上げてきましたが、これは我々動物の宿命のようなもので、今のところどうしようもありませんが、この他に余分に発生する活性酸素に関しては、発生をある程度抑えることは可能なのです。
余分な活性酸素の発生を促すのは、気苦労、取り越し苦労、寝不足、過労、暴飲暴食、過激な運動、厳寒、酷暑などであることは先月号でご説明しましたが、排気ガス、農薬、も活性酸素の発生を助けます。まだよく分かっていないのですが、電磁波も疑いの目で見られています。電気毛布にくるまって寝たり、四六時中、携帯電話を首からぶら下げ胸ポケットに入れて生活している人をよく見かけますが、これも、身体にあまり良くないのかもしれませんね。
このように並べ立ててみますと、「そんなことが身体に悪いことくらい、昔から知ってるわ」と言われそうですが、その原因が活性酸素であることを知っていた人は、多分少数派だったのではないでしょうか。
この他にも大物が抜けていました。タバコと紫外線です。タバコが大量の活性酸素の供給源であることは、このシリーズの第 14 回~ 18 回の5度にわたって詳しくお話をしましたが、それでもまだ言い足りない思いがありますので、重複しますが、今一度申し上げます。
多くの皆様は、タバコが身体に悪いのは、タバコの煙の中に含まれるタール成分のためであると考えていらっしゃるようですが、それは真実の一部でしかありません。
あらゆるガンの原因の約 30 %はタバコにありますし、肺ガンはその 70 ~ 90 %がタバコが原因なのです。タバコはその他にも、閉塞性肺疾患の原因の100%を占めますし、心臓や脳の動脈硬化や痴呆症の発症と喫煙が密接な関わり合いを持っていることが明らかになっています。
昔、東北地方では、1年の半分くらいは囲炉裏端で薪の煙を吸いながら生活していました。囲炉裏から出る煙にはタバコの煙とほぼ同じようなタール成分が含まれています。しかし、今も昔も、東北地方で肺ガンが多いという事実はありません。このことはタール成分が、前述した病気の主犯人ではないことを物語っています。
実は、タバコの煙の中には過酸化水素と呼ばれる活性酸素が大量に含まれています。だから、タバコを吸うということは、活性酸素を吸うということと同じなのです。このタバコの煙の中に含まれる活性酸素こそ、諸悪の根源になっている主犯人だったのです。タール成分の少ないタバコを吸えば多少安全だろうという理屈は成り立たないのです。
活性酸素の発生を促す要因は様々ですが、これらの中にはどうしても防ぎ切れないものと、自分が注意していればある程度防ぎ切れるものがあります。タバコはそのうちの最大のものでしょう。タバコが人間の開発した最悪の嗜好品であることをよく認識して頂いて、手に取らないように、口にしないように心がけて下さい。
《参考文献》
『活性酸素の話』永田親義著/講談社ブルーバックス
『不老革命』古川敏一著/朝日新聞社
(2006年5月1日掲載記事)