活性酸素による身体の酸化(老化)を女性ホルモンが防御しているから女性は長生きなのだ、と先号で説明しました。「ほんまかいな?」と思われる方も多いでしょう。ある一つの説が正しいかどうかを判断するのには色々な方法がありますが、今まで疑問に思われてきたことが、その説を採用すれば合理的に説明できるようになるということも正しさを証明する手段の一つです。太陽が地球の周りを回っているという説では説明できなかった現象が、地球が太陽の周りを回っていると考えることで簡単に説明できてしまいます。
 活性酸素が我々の健康や老化や寿命に密接に関係するという考えが支持されるようになってきた理由は、この考えに従えば、健康、老化、寿命にまつわる様々な疑問が、訳なく説明できるという魅力があるからでもあります。もちろん、魅力があるから正しいのではなく、この考えは色々な事実によって裏打ちされてきています。
50 歳くらいになると、女性は閉経期を迎え女性ホルモンの分泌が減少してきます。何度も申し上げましたが、女性ホルモンは身体を活性酸素の害から守る働き(抗酸化作用)があるので、時を同じくして、成人病にかかる人の割合が増えてきます。女性ホルモンは、その後も少しは分泌されるので、それでも男性より病気は少ないのですが、 60 歳くらいになると女性ホルモンも枯渇してきて、成人病の割合も跳ね上がり、猛烈な勢いで男性を追いかけるようになるのです。 50 歳くらいまで元気だった女性も、 60 歳くらいになると、高血圧や糖尿病等が発生しやすくなり、色々な身体の不調に見舞われてきます。低かったコレステロールも次第に上がってくることが多いのです。外見上もしみやしわが増え、ほほがたるみ始め、いわゆるおばあさん顔になり始めてきます。
  女性が男性より長生きなのは、老化の始まりが遅いからなのです。そして、その原因は女性ホルモンであると申し上げました。少し昔の話ですが、去勢(睾丸を摘出)することにより、自らを女性化して長生きを図った高名な病理学者がおられ、見事長生きを果たされました。しかし、この方法はあまり一般的とは言えませんね。どうすれば老いの始まりを遅らせ、長生きできるようになるのか、このシリーズを楽しみにお読みください。
(2004年6月1日掲載記事)