遺伝子の定める人間の寿命(多分150歳から200歳くらいでしょう。よく分かっていません)いっぱいに我々が生き続けることは出来ないのでしょうか。残念ながら、出来ないのです。生物は成長の段階では、ほぼ遺伝子の命ずるままに成長しますが、老化や寿命は遺伝子以外の影響を強く受けているからなのです。
なぜ成長の段階では遺伝子の命ずるままに成長し、老化の段階ではそうではないのかという問題を追及し出すと、訳の分からない迷路に入っていくことになりますので、ここでは触れません。ともかく、老化や寿命には遺伝子だけではなく、他の因子が関与していることをご理解頂きたいと思います。
今まで、この他の因子とは、放射線や紫外線、内的・外的なストレスやたんぱく質の変性など細胞に対する様々な個々の障害蓄積であると言われてきました。平たく言えば、若い細胞が活動していくうちにだんだん有害物質が蓄積され、それによって若さが失われていくという説で(老化の障害蓄積説と呼ばれています)、こんな説なら小学生でも考えつくことで、面白くもおかしくもありませんでした。
これが、面白くおかしくなったのは、つい最近のことなのです。これまでは、細胞に障害を与える因子は、放射線や有害化学物質や疲労やストレスのように個々に限定されたものであり、それらがそれぞれのやり方で細胞に障害を与えていたと理解されてきたのですが、実はそうではなくて、これらの因子が身体の中に共通のあるものを作り出し、それが細胞を攻撃しているのだということが分かってきたのです。そのあるものこそが本文の主題である活性酸素であることには、もう皆様もお気付きのことでしょう。
今までに個々に悪いといわれてきたもの、前述の放射線、紫外線、農薬、ストレス、大気汚染、タバコ、等々、これらがなぜ悪いかというと、全て活性酸素の発生源になるからだったのです。
事実、活性酸素を最も簡単に発生させようと思ったら、水に放射線を当ててやれば、下記の反応でヒドロオキシルラジカルという活性酸素が発生するのです。
紫外線でも同様な変化が起こり、皮膚に紫外線が当たると活性酸素が発生し、いわゆる光老化と呼ばれる皮膚の老化が促進されます。前述の細胞障害を引き起こす様々な悪い要素も複雑な反応の末、活性酸素を発生させるのです。
老化に活性酸素が深く関わっていることがお分かり頂けたかと思います。