漢方薬
漢方薬は病名によって選ぶのではなく、個人の「体質」や「症状」によって最適なものを選びます。これを「証」に従って治療するといいます。
例えば、同じ高血圧の人であっても体力のある人には、冷やす薬草や毒下しをする薬草を用います。体力のない人には、温める薬草を補って体力をつけて治す薬草を処方します。
もし、この場合に血圧の数値が同じだからといって前者に効いた処方を後者に用いたりすると、とんでもない事が起こります。
この事が漢方を用いる場合には経験のある医師や薬剤師に相談する必要があるといわれる最大の理由なのです。
かどのクリニックでは、漢方薬を保険で処方できるようになった頃から、処方せん発行という形で漢方を患者さんに処方してきました。約三十年にわたる漢方治療の経験を生かし、できあいの漢方ではなく「一人一人の症状や体質に合わせた治療」をきめ細かく行なっています。処方された飲みやすい粉薬や煎じると独特の香りのする薬草が皆さんの体質を知らず知らずのうちに、自然に改善して行きます。
強い薬草の入った漢方薬は必要最低限の処方し、ゆるい薬草の入った処方は、永年苦しんでおられる慢性疾患の体質改善に対して「長い時間をかけてゆっくりと効かせる」という様に薬を使い分けています。
漢方薬で治療を行う場合には、治療される側の患者さんが「どれくらい漢方の知識を身につけておられるか」ということが治療効果をあげる上で非常に大切になります。その意味で、当クリニックでは患者さんのご質問を歓迎しています。どんなささいな事でも、医師に遠慮なくご質問ください。
診断
診断、証の判定の為、望、聞、問、切診を行い、「陰、陽、虚、実」「気、血、水」「寒、熱」「表、裏」等を決定、その後処方を選択します。
処方
● 漢方は原料生薬の品質の良し悪しが、治療効果に影響を及ぼす為、処方せん発行時に産地指定の付せんを つける事もあります。
例えばサフランは大分産(和と言います)の方がヨーロッパ産よりも品質が良く、当帰も大和(奈良)のものが優れている等。
● 漢方は一人一人に合わせ最適の処方をする事が治療上最も大切な事です。その為、既製品ではない、加減方、合方、独自の処方等をよく使います。
処方例
自律神経失調症(不眠、イライラ、不安感、動悸等)
■診断目標となる特徴
●虚実中間証からやや虚証よりの人で、軽い心下痞や振水音があり、心下とヘソの中間ぐらいに軽い博動のある事があり、のどに梅核気又は咽中炙臠のある場合、不安感や恐怖感の強い人に対しての処方
●虚実中間証からかなり虚証よりで、腹部全体は軟弱で、腹直筋の緊張は良く、腹部の博動のある人に使う処方
●実証で胸脇苦満が顕著で、腹部に著明な博動を触れる場合の多い人に使う処方
更年期障害(易疲労、上熱下冷、頭痛、肩こり、イライラ、不眠、下痢、便秘、不定愁訴)
■診断目標となる特徴
●虚実中間証からやや虚証よりの人、軽度の胸脇苦満があり、腹壁の緊張はやや軟弱で、左下腹部に軽い抵抗と圧痛のある人への処方
●虚実中間証からやや実証よりの人。腹直筋の緊張は良く、左下腹部に低抗圧痛(少腹急結)等、お血の証のある人に使う処方
●実証で腹部全体の緊張良好。下腹部硬満気味、左下腹部の低抗圧通著明(少腹急結)な人に使う処方
ダイエット(肥満)
■診断目標となる特徴
●実証で、上腹部両側に強い胸脇苦満がみられ、心下硬満があり、腹部全体が膨満気味で、腹壁は緊張し、固い場合が多い(中年太りが多い)
●実証で、腹壁全体が固く、膨満しており、胸脇苦満はなく、食べ太りの人
●やや虚証よりで、腹部全体が軟弱で皮下脂肪も厚く、ぶよぶよした感じの人(水太りが多い)
アトピー
■診断目標となる特徴
●虚実中間証で、腹直筋の緊張や厚さは普通で、皮膚の栄養状態が悪く、乾燥傾向があり、熱感やそう痒感を訴える人に使う処方
●実証よりの人で、腹壁の緊張は良好。症状が慢性化していて、患部が広範囲で痒みが強く、滲出性痂皮性のもの、夏に増悪しやすい人の処方
●虚実に関係なく使える消炎作用のある処方
●難治の症例は、独自の処方で治療します
不妊・月経不順
■診断目標となる特徴
●虚証よりの人。通常は筋肉の緊張弱く、軽い浮腫傾向がみられ、腹壁やわらかく、心窩部に振水音あり、下腹部全体が膨満気味、表層圧痛の証の人に使う処方。不妊の場合は、もう少し証を拡げて処方します。
●やや虚証よりの人。腹壁全体はやや軟弱気味。腹直筋やや緊張、下腹部に軽い表層圧痛を認めること多い。
冷え性傾向で口渇、手掌のほてりある人への処方。
他の処方との合方で用います