運動をするのは体にいいのか悪いのか、はたまた、するとすればどの程度の運動が最適なのかはとても難しい問題で、悩んでおられる方も多いでしょう。実はこの問題に関しては、明確な答えが出ておりません。主治医の先生に聞いてみますと「適度な運動がいいでしょう」なんて答えが返ってきますが、そんなことは分かりきった話であり、言葉の潤滑油としての機能は認めますが、何も答えていないのとあまり変わりません。
 「隣の人と話が出来るくらいの運動が適当でしょう」なんて言ってくれる先生はよほど親切な先生で、感謝してもいいのですが、それが本当かどうかは分かりません。
 運動をすれば、活性酸素の発生量が増え、それは身体に悪い影響を与えます。だから、この理屈から言えば、長生きをするには、最小限の食べ物を食べ、何もせずにじっとしているのが一番いいということになります。つまり、家の老犬と同じです。昔から、高僧は長寿であると言われてきました。そう言えば、高僧は老犬に似てなくはありません。何もしないでじっとしていることは、高僧には出来ますが、我々凡人には出来ません。どうすればいいのでしょうか。運動と健康のかかわりを私なりに述べておきます。
 若い間は、運動により活性酸素がより多く発生しても、身体の防衛機構がまだ良く機能しているため、活性酸素の毒性はかき消され、運動の良い側面の方が目立っています。この世代の運動は、筋力を鍛え運動機能を高め、新陳代謝を活発にし、脂肪の蓄積を防ぎ、心身のバランスのとれた成長を促し、活性酸素による害よりも、総合的な益の方が多いと思います。年齢が若くなるほどその傾向は顕著なので、青少年期には運動やスポーツは是非必要なものと言って過言は無いでしょう。
 「若いときの話は分かった。歳取ったらどうなんや」というのが大方の皆様の知りたいところなのでしょうが、実はこれが難問で、私も直裁で適切な答えを出すことが出来ません。スポーツや運動を日常的にやっている(あるいはやっていた)人は、案外有病率が高く、それほど長命でないのは一面の真実であることを、また運動が直接の原因で病気になったり、時には死亡することさえ私たちは知っています。一方、 90 歳を過ぎてなお、スキーや登山やマラソンを常人以上の元気さで楽しんでいらっしゃる方もおられるのは、皆様よくご存知のことでしょう。誠に非科学的ではありますが、高齢者の運動に関しては、人それぞれと言うほかは無いのです。
 運動が好きな人、嫌いな人、人それぞれなのですが、一番バカバカしいのは「運動せなあかん」と思い込んで、イヤイヤ運動をやっている人たちです。嫌いな運動を続けて、それなりの効用があるならまだしも、それによって健康を害したり、早死にしてしまっては、まったく割に合いません。もし運動が好きな人なら、たとえ結果がそうなったとしても、「好きなことを好きなようにやったんやから」と、定命として受け入れることが出来るでしょう。結局、老後の運動は「好きだったらやりなさい。嫌いだったらやめておきなさい」というのが平凡ながら、私の意見なのです。運動と健康の関係を次回も続けます。
《参考文献》
『活性酸素の話』永田親義著/講談社ブルーバックス
『不老革命』古川敏一著/朝日新聞社
『スポーツは体にわるい』加藤邦彦著/光文社
(2006年8月1日掲載記事)